パトリシア・コーンウェルの『変死体』である。2011年。
今回、まとめてパトリシア・コーンウェルを読んでみた。主に古本屋の100円コーナーに放り投げられてるのを集めてくる作業になる。パトリシア・コーンウェルは登場した90年代に一冊読んだだけだ。その時は特に関心する部分はなく印象が薄かった。
サラ・パレツキーを集中的に読むという作業は、なかなか楽しいものだったが、こちらはどうだろうか。結論としては、なかなかひどかった。しかし、それなりのクオリティはあるので、気楽な娯楽として読むにはいいと思う。
欠点と欠陥と特徴が読んでると、どんどん見えてくる。いろいろあるのだが、一番問題なのは主人公の不安定さだ。身も蓋もなく言ってしまえばメンヘルなのである。
この本では主人公ケイ・スカーペッタは州の検屍官のトップにまで出世しているのだが、厳しいアメリカ社会でこんなメンヘルな人がトップになれるとはとても思えない。
今回はかつて抜擢した人間が悪の道に足を踏み外してしまう。それをずっと自分のせいだと悩んでいる。
サラ・パレツキーの主人公V・I・ウォーショースキーなら、『父がよく言ってた。誰にでも失敗はある。失敗をいつまでも悩んでいるのは、あほうのすることだ』と2行で終わらせているところである。
それを上下二冊に渡ってくどくど悩んでいるのである。『苦悩する主人公』という共感をもたせたいのだろが、これでは、単なるメンヘルであろう。
そもそも、相手だって大人なんだから、客観的に言って主人公に責任はないと、読者は読んでいて思うと思うのだが、パトリシア・コーンウェルは、そのへんの推測ができないようだ。小説家としての勘が鈍いのだな。
非常に欠点と長所がわかりやすい人なので、書きたいことはいろいろあるのだが、今日はここまで。
内容紹介
スカーペッタが責任者に就任した法病理学センターがある街で、犬と散歩中だった若者が心臓発作で倒れ、死亡が確認された。だが、外傷のなかった遺体から、翌日、大量に流血していることがわかった。それは彼が生きたままモルグの冷蔵室に入れられたことを意味していた! 緊迫の検屍官シリーズ第18弾。(講談社文庫)
内容(「BOOK」データベースより)
コーンウェル,パトリシア
マイアミ生まれ。警察記者、検屍局のコンピューター・アナリストを経て、1990年『検屍官』で小説デビュー。MWA・CWA最優秀処女長編賞を受賞して、一躍人気作家に
池田/真紀子
1966年東京生まれ。上智大学法学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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