最初から最後まで異常な緊張感が持続する:ナンシー・クレスの『ベガーズ・イン・スペイン』|今日のSF

2017年6月3日土曜日

読書

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今日のSF。ナンシー・クレスの『ベガーズ・イン・スペイン』である。2009年。短編集。

これがまた傑作中の傑作で。良い点は、(1)最初から最後まで異常な緊張感が持続する。

(2)現代的なテーマの処理。テーマ自体は新人類と旧人類の対立という古典的なものになるのだが、ポイントはそこではなくて、その問題を二十一世紀に生きる我々の社会感覚で考えて処理をしている。このへんが70年代、80年代の作家とは違うところ。こういうテーマの処理の現代的な感覚は、グレック・イーガンとも共通している。たぶん皮肉屋でもあるな。

(3)きめこまかな人間描写。キャラクターの描き方がシリアスで奥が深い。このへんが大衆文学的な作品とは一線を記しているところ。

この中の一編を元にした長編三部作がナンシー・クレスの代表作らしいが、短編の方が出来が良いという話もあるようだ。機会があったら読んでみたいが、その日は来るだろうか。むしろ、中編のベガーズ・イン・スペインを上下二巻くらいの分量で読んでみたい、と思う。内容的にはそれくらいのネタが詰まっている。


内容(「BOOK」データベースより)
21世紀初頭、遺伝子改変技術により睡眠を必要としない子供たちが生まれた。高い知性、美しい容姿だけでなく驚くべき特質を持つ無眠人は、やがて一般人のねたみを買い…「新人類」テーマの傑作と高く評価され、ヒューゴー賞、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル読者賞を受賞した表題作をはじめ、ネビュラ賞、スタージョン記念賞を受賞し、“プロバビリティ”3部作のもととなった「密告者」など全7篇を収録。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

クレス,ナンシー
1948年生まれ。ニューヨーク州の田舎町で育ち、ニューヨーク州立大学を卒業後、4年ほど小学校で教える。結婚を機に仕事をやめ、子育てのかたわら大学に戻り、教育と文学の修士号を取得。1981年にThe Prince of Morning Bellsで長篇デビュー。1991年アシモフ誌に発表した中篇「ベガーズ・イン・スペイン」でヒューゴー賞、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル読者賞を受賞。1996年同じくアシモフ誌に発表し、ネビュラ賞、アシモフ誌読者賞、スタージョン記念賞を受賞した中篇「密告者」の世界をもとに作り上げた『プロバビリティ・ムーン』にはじまる3部作を2000年から発表。第3作『プロバビリティ・スペース』は2003年のジョン・W・キャンベル記念賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 




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Tokyo, Japan
漫画家、自宅録音家。 代表作「怪奇カエル姫」「37564学園」。 2001年、いぬん堂からCD「アントニオ青年のエイリアンセックス体験」発売。 2013年、アメリカのMonofonus Pressからカセットテープ「Attack of the Killer Hamster」発売。

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