グレッグ・イーガンの『ひとりっ子』である。短編集だがイーガンの最高傑作だと思う。長編にもいいのはいくつかあるが。
グレッグ・イーガンの特徴として創作姿勢のシリアスさというのがある。それと現代性だな。SFと現代社会の問題を網羅して扱ってると言っていいだろう。フェミニズムや環境問題など。
環境問題なども、一昔前の作家のように、イルカでも出してきて母なる地球とか言っていればいいだろうというような、ステロタイプな姿勢とは違う。もっと辛辣なものだ。欧米に比べるとリベラルなオーストラリアに住んでいるせいか、環境保護団体などの運動家にはかなりうんざりしているのだろう。
そのへんの物の見方というものに現代性を感じる。痛々しいまでの創作姿勢である。現代の作家って昔と戦う相手と守るものが違ってる。反戦や平和を唱えていればピースという時代ではない、しかし、本質的にはやっぱりみんなリベラル寄りなので微妙なバランスの上で上で書くことを求められている。それができなくては現代作家ではない。なかなか難しい時代になってきた。
グレッグ・イーガンは現代のSF作家の代表的人物と思っていうるのだが、欧米ではそうでもないようだ。あんがい、人気がないみたいだ。なくはないとは思うのだが。
アメリカなどはエンターティメント性のある作品が主流なので、そのへんで少しはずれるのかもしれない。はんめん、日本での評価が高いというのは、よくわかる。
内容(「BOOK」データベースより)
「この子がわたしの娘なの。生まれるのがほんの何年か遅くなったけれど」―待望の第一子となるはずだった女の子を失った科学者夫婦が選択した行動とは!?子どもへの“無償の愛”を量子論と絡めて描く衝撃の表題作、星雲賞を受賞した数学SFの極北「ルミナス」、著者が追究しつづけるアイデンティティ・テーマSFのひとつの到達点「ふたりの距離」など、本邦初訳2篇を含む7篇を収録する、日本オリジナル短篇集第3弾。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
山岸/真
1962年生、埼玉大学教養学部卒、英米文学翻訳家・研究家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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