頭蓋骨のマントラ:エリオット パティスン|今日のミステリー

2015年10月11日日曜日

読書

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頭蓋骨のマントラ:エリオット パティスン|今日のミステリー

これは傑作だな。ここ10数年間くらいのミステリーの成果のひとつなんじゃないか。特殊な設定と状況による異常な緊張感が最後まで持続する。ステレオタイプにおちいらないキャラクター描写がひじょうにクールでうまい。

中国領のチベットが舞台なので、ここで頭の悪い作者だと人権問題の旗をふりまわしてテーマばかり先行する中身のない話になったりしそうだが、この作者はそのもっと先まで見ている。そのへんの判断と抑制がみごとだ。

この話のようにキャラクターが生きて動き始めると作者は余計なお遊びを入れたくなる誘惑に駆られるのだが(このお遊びだけでできてるのが同人誌の漫画などである)、そこをみごとに抑制して最後まで描いている。 すごい力量だ。

だいたいチベットを舞台に中国人とチベット人ばかり出て来る話なんて、取材の手間を考えただけで書く気にならない。これをバカ話にも冒険活劇にもしないでリアリティと緊張感のある話にしたのはすごい力技である。

これの続編も書いたようだが、緊張感をもたらしている異常な状況がすでに解決されているので、同じレベルの話にもっていくのはむずかしいんじゃないかな。

頭蓋骨のマントラ (ハヤカワ・ミステリ文庫) 文庫 – 2001/3
エリオット パティスン (著), Eliot Pattison (原著), 三川 基好 (翻訳)

When a headless corpse is found on a Tibetan mountainside, veteran Inspector Shan Tao Yun might seem the perfect candidate to solve the crime - except that he has been stripped of rank and imprisoned for offending the party in Beijing.

"Vivid, absorbing, intriguing" (Sunday Telegraph)
"A cocktail of action adventure...a great read" (Guardian)

中国経済部の主任監察官だった単道雲は、大物が絡んだ汚職事件を追及したことから北京を追われ、今はチベットの奥地、ラドゥン州の強制労働収容所で苛酷な日々を送っていた。ある日、作業現場で男の首なし死体が発見された。折悪しく州の検察官は不在、しかも司法部の監査が入る予定になっていた。困惑した州の軍最高責任者は単に事件の解決を命じるが…アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞を受賞した話題の大作。

Eliot Pattison is a world traveler and frequent visitor to China, whose numerous books and articles on international policy issues have been published on three continents. The Skull Mantra is his first work of fiction and won him the Edgar award for Best First Novel from the Mystery Writers of America.

パティスン,エリオット
エリオット・パティスンは、弁護士として投資など国際的なビジネスの場で活躍してきた。ビジネス関連、法律関連の記事を発表し、著作のひとつが《ニューヨーク・タイムズ》により、1996年のもっともすぐれた経営書に選ばれている。世界各地を訪れているが、なかでも中国には何度も足を運んでいる。その経験と知識をもとに描いたのが本書で、2000年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長篇賞を受賞し、英国推理作家協会賞の候補にもなった。単道雲がふたたび活躍する第二作Water Touching Stoneも完成している。現在パティスンはアメリカのペンシルヴァニア洲で妻と三人の子供と暮らしている

三川/基好
1950年生、早稲田大学大学院修士課程修了、早稲田大学文学部教授、英米文学部翻訳家。訳書に、『ジンジャー・ノースの影』ダニング、『誰の罪でもなく』ヒル、『逃げるが勝ち』リード(以上早川書房刊)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)




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