『カズムシティ』アレステア・レナルズである。2006年。
ぶあつい。普通、2冊にするような厚さだと思うが、ぶあつくして目立たせようという魂胆だったのだろうか。日本の製本技術の進化を体感できる。昔だと、なかなかこんなに厚くはできなかったはずだ。
内容だが、これが微妙なところで、できは悪くないのだが、もっと盛り上がりそうなところで盛り上がらない感じで、ずっと行く。悪くはないが、悪くはないんだけどなあ……という地点で止まっており、おっ、これはいいな、というところまでは、なかなか踏み込んでくれない。
設定や題材は悪くなくて、ハードボイルドな語り口で、これがグレッグ・イーガンかラリー・ニーブン クラスの作家なら、ずっとおもしろく書けてるはずだ、と思いながら読んだ。
ベストセラーは長い方が売れるそうで、これも本来は半分くらいの分量だったものを2倍に増やしたそうだ。たぶん増やした部分はカリスマ宗教家の部分で、やはり、このところがテンポが悪く、このパートを全部切ったら、良くなったんじゃないかなと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
身近警護の専門家タナー・ミラベルは、雇い主一家を惨殺した黒幕レイビッチを追って、故郷から遠く離れたイエローストーン星に到達した。だがそこで目にしたのは異形の都市カズムシティだった。謎のウイルスによる“融合疫”の発生により、建築物はあたかも新種の植物のように成長し、複雑に融合しあって奇怪なジャングルと化していたのだ…異形の街を舞台に展開するノンストップ・ハードボイルド・アクション超大作!英国SF協会賞受賞作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
レナルズ,アレステア
1966年イギリスの南ウェールズ生まれ。ニューカースル大学で物理と天文学を学び、スコットランドのセントアンドリューズ大学で天文学の博士号を取得した。1991年、オランダに移住し欧州宇宙技術センターに入社。その前年の1990年、「インターゾーン」第36号に掲載された短篇“Nunivak Snowflakes”で作家デビュー。以来、仕事のかたわら短篇を発表していたが、2000年に『啓示空間』で長篇デビュー。たちまち注目を集め、翌年発表した『カズムシティ』で見事英国SF協会賞を受賞。その後も毎年重厚な長篇SFを発表し、現代英国SF界を代表する俊英として高く評価されている
中原/尚哉
1964年生、1987年東京都立大学人文学部英米文学科卒、英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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