タイタニックを引き揚げろ :クライブ・カッスラー|今日の本
である。 ようやく読み終えた。大衆アクション小説のベストセラー作家クライブ・カッスラーの初期の作品でこれが出世作らしい。まだ初期の作品と言うことで、こなれていないのか、最初の100Pくらいまでは、なかなか盛り上がらないでじれったかったが、その後、どんどん良くなる。
たぶんクライブ・カッスラーの中では最高傑作のひとつではないか。ベストセラー作家になってからは明朗快活な部分が全面に出て来るのだが、この頃はまだシリアスさがあって意外とそこが良い。スパイ小説のおもしろさの部分があって、とくにソ連にいるスパイの描写には深い感銘を受けた。クライブ・カッスラーなのに。
クライブ・カッスラーなので基本的にはバカ話になるのだが、タイタニックに空気を入れて浮上させるってのはばかばかしすぎるので置いておいても、今回では希少鉱物ビザニウムというのが出て来るのだが、これによってどんな兵器でも事前にサーチして破壊する防衛網ができるらしいのだが、『具体的に希少鉱物ビザニウムがどういう働きをしてそのレーダー網に貢献するのか』の説明がいっさいない。
これではパルプフィクション時代のSFに出て来る『謎の物質ミスターX』と同じである。近代のハードSFだと、 そのへんの部分はかなりのこじつけであろうとも、一応説明しないとならないので、一言も説明しないクライブ・カッスラーの明快な姿勢に驚いた(そもそも、SFじゃないが)。話に出て来る大統領もこれでは母国を守れる理由がわからなくて困ったのではないか。
タイタニックを引き揚げろ (新潮文庫 カ 5-2) 文庫 – 1981/1
クライブ・カッスラー (著), 中山 善之 (翻訳)
* 文庫: 664ページ
* 出版社: 新潮社; 改版 (1981/01)
* ISBN-10: 4102170022
* ISBN-13: 978-4102170021
* 発売日: 1981/01
米ソ冷戦下、音波によるミサイル防衛システム『シシリー計画』が米大統領の秘密資金で進められている。それに不可欠な希少鉱物ビザニウム(架空の物質)は、ロシア(北極圏スワトロフ島)で採掘されたのち1912年に沈没したタイタニック号に積まれていたという。ソヴィエト政府による引き揚げ妨害工作が暗躍する中、ダーク・ピットの調査用深海艇はついにタイタニック号の手掛かりを発見する。しかし、3,650メートルの海底から4万数千トンもの鉄の塊を引き揚げることが果たして可能なのか。そして、その方法とは?
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