続いてさらにラリイ・ニーヴン。『時間外世界』 である。『リングワールド』にくらべると、爽快感などがまったくないが、これが先の読めない話で
現代→息苦しい未来社会→宇宙→超未来の地球
と、どんどん状況が変わっていく。お話的には、それぞれほとんど関係がないとも言っていいくらいだ。
おもしろいのがラリイ・ニーヴンのキャラクター造形における善悪感で、超未来の地球で異常に知能が進化した人間が出て来るのだが、これがすぱっと悪役にはなっていない。かと言っても少しも善人ではない。他のキャラクターも同じで、どの人もそれぞれ、立場と事情があるよね、という描写になっている。
ここが重要なところで、これをすぱんと善悪にわけていたらずいぶんと古臭い話になっていただろう。このへんが黄金時代のSF作家と現代SF作家の始まりあたりにいるラリイ・ニーヴンの違いだな。
あと、超知能が進化した未来人が主人公の歌う昔の歌を、すごく気にいるのだが、なにしろ、頭がいいので一回聞くと完全に覚えてしまう。そのために、毎回、新しい歌を歌わないとならなくなり、とうとう CMメドレーを歌い出す…… というエピソードがひじょうにバカバカしくてよくできている。
このアイデアだけでも、この本の存在価値がある。
時間外世界 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 1986/2
ラリイ・ニーヴン (著), 冬川 亘 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
時間と空間の彼方へ! ハードSFの第一人者が、壮大なスケールと華麗なアイディアで描く傑作冒険SF!
文庫: 429ページ
出版社: 早川書房 (1986/02)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150106533
ISBN-13: 978-4150106539
発売日: 1986/02
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