『ゲイトウエイ〈2〉蒼き事象の水平線の彼方』 フレデリック・ポールである。待望の2巻目。こっちのほうが1より良い。1はおもに主人公が自分のだめなところを一冊に渡ってぐちぐち言ってるという話なので、2のほうが壮大に話が動いている。というか、1巻目の主人公があまり出て来ない。
ポイントはヒーチー衛星で発見された人間の孤児の青年のあつかいで、子供の頃から壊れかけたAI機械だけを相手に育ってきたために、人間関係のルールを学ぶことができなかったので、たいへんに下品な人間になっている。
現実にそういう状況で育つとそういう人格になるだろうが、娯楽小説なんだから現実性には目をつぶって『孤独な環境で閉鎖的に育った子供が心を開いて人間的に成長していく』とすれば、ずっとふつうに感動的な展開になるのに、まったくそうはしないというのが、フレデリック・ポールらしいことろである。この青年、次の巻では人格障害者の最悪な人間として身も蓋もない描写をされている。
あと別巻の短編集『ゲイトウエイへの旅』で主人公をつとめる宇宙のトラック運転手が、この巻の山場でいっしゅん出てくる。 こっちの人を主人公にしたほうが、よほど血湧き肉躍る話になると思うが、それをしないのがフレデリック・ポールらしいところ。まあ確かにそれをするとふつうな話になってしまうのだが。
ゲイトウエイ〈2〉蒼き事象の水平線の彼方 (ハヤカワ文庫SF) 文庫 – 1988/9
フレデリック・ポール (著), 矢野 徹 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
超先史文明を築いた宇宙種族ヒーチー人の“食料工場”が発見された。そのニュースに地球中は興奮した。ヒーチー人の残した超光速船を使って、巨万の富を築いたロビネット・ブロードヘッドもそのひとりだった。彗星ガスから無尽蔵の食料を生産できるこの工場こそ、食料難にあえぐ地球にとって絶好の切り札となるのだ。ブロードヘッドはさっそく、食料工場開発会社を設立し、冥王星の彼方へ調査隊を派遣した。ところが、3年半におよぶ航宙のすえ到着した調査隊は、そこで思いもよらぬ事態に遭遇する…。『ゲイトウエイ』で語り残されたヒーチー人の謎の核心に迫る力作。
文庫: 498ページ
出版社: 早川書房 (1988/09)
言語: 日本語
ISBN-10: 4150107866
ISBN-13: 978-4150107864
発売日: 1988/09
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