トラブル・イズ・マイ・ビジネス:レイモンド・チャンドラーである。
チャンドラーは評価が高いが、昔、読んだ印象だと文学性はあるが、あまりおもしろくなかった。とくに村上春樹などが、持ち上げているのが実に不快だった。この時代の作家だと、ロス・マクドナルドのほうが感動していた記憶がある。むしろ、ミッキー・スピレーンの低俗な暴力と女の路線が気に入っていた。おそらく、俺の頭の程度が低いということだろう。
それで30年ぶりくらいに警戒しながら、レイモンド・チャンドラーを読んでみた。読んでみたらこれがおもしろい。マーロウと他の探偵が出てくるが、どれも余計なことばかり言う。へらず口をたたいて相手を怒らせる探偵というのは、このへんから来てるのだな。探偵もタフだ。この時代のハードボイルドは、情緒性よりやはり暴力とサスペンスが身上なのだろう。その部分が非常に良い。
『情緒性』や『高い文学性』などと、後世の評論家や村上春樹が言うので読む気をなくすが、そういう愚かな評価という障害を飛び越えて読んでみると、なかなかおもしろい読み物だ。つまり、後世の人間により、『いやな色』がついてしまった作家ということだな。これはもったいない。そういう偏見にとらわれずに読んでみると良い。
短編集で、どうでもいい話もあるのだが、いくつかの話はかなり出来が良い。
内容(「BOOK」データベースより)
本書にはチャンドラーが1939年後半以降に発表した8篇の短篇と2篇のエッセイが収録されている。「マーロウ最後の事件」は、初出時からフィリップ・マーロウを主人公にした唯一の短篇。これまで「簡単な殺人法」として知られてきたエッセイは「むだのない殺しの美学」という的を射たタイトルを得て生まれ変わった。すべて新訳でチャンドラーの全短篇を年代順に網羅する画期的全集、ここに完結。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
チャンドラー,レイモンド
1888年シカゴ生まれ。1933年に短篇「ゆすり屋は撃たない」で作家デビューを飾る。1939年には処女長篇『大いなる眠り』を発表。1953年に発表した『長いお別れ(ロング・グッドバイ)』で、アメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞最優秀長篇賞に輝いた。1959年没。享年70(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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